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腫瘍・頭頸部外科

水曜日 午後

  ● 担当医:吉田 知之、伊藤 博之、清水 顕、塚原 清彰、岡本 伊作、近藤 貴仁

 頭頸部腫瘍グループでは喉頭癌、上、中、下咽頭癌、鼻副鼻腔癌、舌口腔癌、唾液腺腫瘍における集学的治療を行っています。
 集学的治療とは手術、放射線、抗癌剤治療を効率よく組み合わせ、多方向から癌を治療していく方法です。当院では従来の拡大手術法のほかに、最先端治療である特に超選択的大量動注化学療法、定位放射線治療、マイクロサージャリーを導入した頭頸部癌再建手術などを行い、多くの患者さんを治療しています。 また、近年の癌治療においては治療後の患者様の生活の質(Quality of life)の向上にも重点を置き、発声や嚥下を保存する治療も手がけております。悪性腫瘍の進行状態、全身状態、ご年齢等にもよりますが、抗癌剤による化学療法と放射線療法を併用した化学放射線療法の進歩により、耳鼻咽喉科領域の重要な臓器(喉頭、咽頭、舌など)を切らずに治すことができることがあります。

  甲状腺腫瘍、唾液腺腫瘍については、近年の診断技術の向上により手術の適応が厳格になりました。当院では手術が本当に必要なのか、定期的観察のみでよいのかをきちんと見極めたうえで治療を開始しております。手術は神経温存、機能温存を重視して行っております。耳下腺手術においては最新式の神経モニタリング装置を導入し、顔面神経温存手術をおこなっています。2007年においては頭頸部癌手術数78件、そのうち拡大手術後再建術を行ったのは21件でした。

 当院で行っている最先端治療の一部をご紹介します。治療法は患者さんの病気の種類、大きさ、年齢、基礎疾患の有無でそれぞれ異なります。いろいろな検査を受けていただいた上で総合的に最も適した治療法を一緒に考えていきます。

1. 頭頸部癌拡大手術+機能再建手術

 進行している頭頸部癌の場合は腫瘍を大きく切除する必要があります。その場合、正常組織の一部も一緒に切除しなければなりません。たとえば下咽頭がんの場合は食べ物が通る下咽頭という道も一緒に切除します。この場合、切除しただけでは手術のあと食事が食べられません。そのため、遊離皮弁移植+マイクロサージャリーという高度な医療技術を用いて食事が通る道を再建します。患者さんの体の健常な一部を採取して、頸部に移植します。移植した組織と頸部の血管を手術用顕微鏡を見ながら吻合(くっつける)する技術がマイクロサージャリーです。当院形成外科医によるマイクロサージャリーチームとコラボレーションし、最新で高度の医療技術を駆使して行います。
  当院ではこのような再建手術を年間約20—30例行っており、確立した技術を持っています。12時間前後かかる長時間手術であり、高度な技術を要求されますが、近年の医療レベルのベースアップにより治療成績は年々向上しています。遊離皮弁移植の生着率は一般的に90-95%といわれていますが、当院でも同様に良好な成績を収めています。鼻副鼻腔癌、上顎癌、舌癌、中咽頭癌、下咽頭癌、耳下腺癌に対して行っています。

2. 超選択的動注化学療法

 中咽頭癌、舌癌、副鼻腔がんや手術が難しい進行した癌に対して高度な技術を駆使して行う抗がん剤治療のことです。広義の血管治療の一方法で、足の付け根の大腿動脈から血管治療用のカテーテルを挿入して頭頸部癌の栄養血管内に直接高濃度の抗癌剤を注入する方法です。非常に高い効果がみられ、臓器温存を考えた根治治療として行っています。また、この治療に放射線療法を併用することにより病気の種類によっては今までは手術的根治術が必要であった方でもがんを切らずに治すことができる場合があります。だだし、脳梗塞や血栓症が起こる確率が約5%起こると言われており、安全に治療ができるように慎重に適応を判断します。健康保険の範囲で治療します。
左図:超選択的動注化学療法を行っているところのデジタルレントゲン写真。左側の動脈が造影剤で黒色に染まっているのがわかる。

3.化学療法併用放射線治療

 放射線治療と化学療法を同時期に行なう方法で、抗癌剤による抗腫瘍効果と放射線感受性を高める増感作用を期待する方法です。その効果はめざましく、進行癌に対しても臓器温存、生存の延長が期待できるようになってきました。従来は、多くの進行症例では癌を治すことが困難であり、大きな手術を行う手術が必要でした。この治療により頭頸部癌の治療成績、臓器温存率が向上しつつあります。
  当施設では頭頸部癌に健康保険が適応となっている3種の薬剤、すなわちドセタキセル、シスプラチン、5-FUを使用して抗がん剤治療(=化学療法)を行い、同じ時期から放射線療法を行う治療を標準的治療として行っています。病気によって異なりますが、放射線を30回(約6週間)行う間に抗癌剤治療を計2回行います。2-3種類の抗がん剤を持続して点滴するため1回の抗癌剤治療に要する時間は約1週間です。
ただし、病気の範囲や大きさによって適応がない場合があります。この場合、通常手術が必要です。また、治療による合併症が少なからずみられます。口腔咽喉頭領域に放射線をあてた場合は重度の放射線性口内炎や放射線性口腔乾燥症がおきます。一部の症例では唾液腺の萎縮が生じるため長期に高度の唾液分泌機能障害が起こり、食事が摂りにくかったり虫歯ができたりします。強い治療のため、約2-3ヶ月の入院が必要です。