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音声外来

水曜日 午後

  ● 担当医:渡嘉敷 亮二、平松 宏之、本橋 玲
  ● Supervizer:一色信彦(東京医科大学兼任教授、京都大学名誉教授、
           京都ボイスサージセンター院長)

音声外来は声の病気を診察するための外来です。有名なものでは声帯ポリープ、声帯結節といった病気です。特に、歌手、アナウンサー、学校の先生など、仕事や趣味で声を良く使う方は、スポーツ選手が専属の筋肉トレーナーや整形外科の医師の定期的なチェックをうけるのと同様に、自らの声帯を良い状態で保つ必要があり、このような目的での通院も歓迎いたします。 一般的な疾患以外に、当院では痙攣性発声障害(けいれん性発声障害)反回神経麻痺(声帯麻痺)といった疾患に対し、手術を行うことで良好な結果を得ています。またホルモン剤の投与、や先天的な要因で声が低くなった方の声を、手術により高い声にすることが出来ます(声を高くする手術)。以下に当院で行っている音声外科治療のいくつかを紹介します。

I. 反回神経麻痺(声帯麻痺、喉頭麻痺)

声帯は気管の入り口にある門のようなもので、息を吸うときは肺に空気を入れるために開き、声を出すときは閉じて振動します(図1)。 東京医大 音声外来 反回神経麻痺
反回神経麻痺(声帯麻痺、喉頭麻痺)で声がかれるのは、麻痺した声帯が開いた状態で動かなくなってしまうためです。麻痺した声帯が、声を出すときと同じように正中で止まっている場合には声は悪くなりません。現在の医学では、麻痺した声帯を再び動くようにすることは出来ませんが、開いた声帯を、声を出すときと同じ位置に移動させる手術(正中移動術)を行うと、声が出るようになります。この治療にはいくつかの方法があります。現在行われている主なものは 1、声帯内注入術、2、甲状軟骨形成術1型、 3、披裂軟骨内転術 の3つです。当院では3つの手術すべてが可能ですがそれぞれに長所短所があります。
以下にその方法を解説します。

1. 声帯内注入術

東京医大 音声外来 声帯内注入術 麻痺した声帯の外側に、物質を注入することにより声帯を正中移動させる方法です(図2)。
 注入物質には以前はシリコンが使われていましたが、現在では主に脂肪が使われます。頚部の切開が不要で簡便なため、わが国ではもっともポピュラーな方法です。しかしながら全身麻酔で行われるため、手術中に患者様の声を聞きながら注入量を調節できないこと、また、脂肪は術後しばらくしてある程度吸収されるため、効果が確実でないことが欠点です。また過剰に注入しすぎたり、声帯の粘膜直下に注入されたりした場合、声は悪化する危険があります。
この場合以前の声より悪くなることがあり、修復が難しくなります。

2. 甲状軟骨形成術1型(当院兼任教授の一色信彦先生が考案)

 東京医大 音声外来 甲状軟骨形成術喉頭の軟骨(のど仏の軟骨です)に穴を開け、そこから麻痺した声帯を人工物質(最近はゴアテックスが世界的に用いられています)で押して正中移動させる方法です(図3)。
 頚部の外切開が必要ですが、局所麻酔で行うため、患者様の声を聞きながらもっとも良い声の出る位置で調節することが出来ます。 声帯に直接触れないため、手術前より声が悪化することは無く、仮にそうなったとしても、人工物質を除去することで元の状態に戻すことが出来る「可逆的な」手術です。
手術は簡便で、1時間~1時間半ほどです。高齢者や体力が低下気味の方でも可能です。

3. 披裂軟骨内転術(当院兼任教授の一色信彦先生が考案)

東京医大 音声外来 ビデオ1(術前喉頭所見) 術前喉頭所見ビデオ 術後喉頭所見ビデオ

 人間が声を出すときには、披裂軟骨が内転することにより声帯が正中に移動します(図4)。
この手術は実際と同じ声帯の内転を再現するもので、もっとも理にかなった手術です。声帯は、ギターやバイオリンの弦と同じで、「ピン」と張った状態でもっとも良い声がでるとわれわれは考えています。図2,3を見るとわかるように1,2、の手術は「ゆるんだ弦を」外側から押しているだけですが、この手術は声帯の張力を生理的に再現することが出来ます。この手術と2の手術を同時に行うことで声は非常に良くなり、当院では多くの患者様が正常な声に戻っています(ビデオ1、2、)。
欧米では2の手術とこの手術を併用することが一般的に行われていますが、わが国では両者を一期的に併用している施設は当院を含めて数施設しかないようです。2と同様、局所麻酔で行われ、手術時間もその分長くなりますが、当院では、麻酔科医の協力で、患者様の負担を軽減する特別な麻酔を用いて手術を行っています。

II . 痙攣性発声障害(けいれん性発声障害)

 けいれん性発声障害とは、声帯が自分の意思に反して過剰に「閉じよう、閉じよう」とするために、声が詰まってしまう病気です。重症例では、苦しく、しぼり出すような声になります。
声帯に見た目の異常が無いため、数か所の耳鼻咽喉科で「異常ない」あるいは「精神的なものだ」といわれ、原因がわからずに悩んでいた患者さまも少なくありません。病気のはっきりした原因がわかっていないため、治療は「閉じよう」とする声帯を、いかに閉じ過ぎないようにするかを意図した治療が中心です。以下に現在行なわれている、おもな治療を解説します。

1.ボツリヌムトキシン注射

 世界中で最も一般的に行なわれている治療は ボツリヌムトキシンを声帯筋に注射する方法です。この注射により声帯筋は一時的に力を失うため無理に「閉じよう」とはしなくなり声は元に戻ります。この治療は外来で行なえますが、効果が限られており数ヶ月に1回の注射が必要です。なお、当院では以下に述べる手術治療が中心のためボツリヌム注射は行なっておりません。 患者さまが、手術ではなくこの治療を希望される場合、しかるべき施設に紹介させていただきます。(この治療は日本では数施設でしか行なわれていません)

2. 甲状披裂筋摘出術

勝手に閉じようとする声帯筋(甲状披裂筋)を手術で摘出する方法です。 入院して全身麻酔下におこないますが、頸部の切開は不要です。術後 約3ヶ月のあいだ、息がもれるような声が続きますが、その後はほぼ正常に近い声まで改善します。
術前後の声のサンプルを以下にしめします。

術前声
術後声
声帯筋(甲状披裂筋)手術術前声
声帯筋(甲状披裂筋)手術術後声

3. 甲状軟骨形成術2型(当院兼任教授の一色信彦先生が考案)

 局所麻酔下に喉頭の軟骨を縦に切開し、左右の声帯を少しだけ遠ざけてあげる手術です。 患者さまの声を聞きながら手術をするため微妙な調節が可能です。頸部に小さな切開が必要ですが、声帯には直接触れないため術前より悪化することが無いこと、また術後声が気に入らない場合はもとに戻すことの出来る可逆的な手術であることが良い点です。

4. 外転型痙攣性発声障害

内転型痙攣性発声障害とは逆に、しゃべっている途中で急に声帯が開いてしまい、息がもれるような声になってしまいます。
声のサンプルをお聞きください。

外転型痙攣性発声障害

III. 声を高くする手術

甲状軟骨形成術4型(当院兼任教授の一色信彦先生が考案)

 生まれつき、あるいはホルモン剤投与の影響、甲状腺手術など、何らかの理由で声が低くなってしまった方の声を手術で高くすることができます。ギターやバイオリンの弦と同様声帯を前後に引っ張ると声が高くなるのです。この方法は、前述した声帯麻痺の手術の際に、声帯の緊張を得て良い声を出すための方法として使われることもあります。声を高くしたいという原因は様々ですが、一度受診してご相談ください。

これまでご紹介した手術の効果は、当院兼任教授一色信彦先生のホームページでもご覧いただけます。 一色クリニックHPへ